2026-05-06 13:13

『「復讐の迷宮」は実在するか』(イレク・ライデ)

古の時代より船乗りたちの間で語り継がれ、恐れられ、文学や旋律画、映画やゲームなどに表現形式を変えながら今もなお、世界中の人々の間で関心と恐怖を伝え続ける伝説『復讐の迷宮』。この迷宮が実在するのでは?という、伝説が生まれた時からずっとまとわりついてきたであろうこの疑問とそれに対する見解を、書籍という形で初めて広く世に示した名著。

原書(初版)言語:ヴェリアート語

出版:航海書房

著者情報

イレク・ライデ:ヴェリアートの民俗学者。幼い頃に聞いた、世界中の船乗り達の間で語り継がれてきた伝説『復讐の迷宮』に惹かれ、実際に世界各地をまわり、『復讐の迷宮』あるいはそれに類似した伝説や民話、歴史について徹底的に文献および聞き取り調査をした。一般人向けに執筆した『「復讐の迷宮」は実在するか』がベストセラーとなり、これがブームを起こし、以降、『復讐の迷宮』を題材とした研究や、文学作品や映画、ゲームなどのエンターテインメントなどが急増した。

訳注

『復讐の迷宮』

古の時代より船乗りたちの間で語り継がれ、恐れられてきた伝説。

現代でも、エンターテインメント、特にホラー分野で頻繁に『復讐の迷宮』を題材とした作品が生み出され続けている。特に有名なものとしては、ネーフォル・イーヴィの『迷宮』、ジルア・ザクリーの『人形の世界』などがある。

あらすじ(語り手によっても内容が変化するが、大筋は以下のような内容)

前王を謀殺し、新たに即位した暴虐な若い王の戯れで、前王の親友だった大貴族が永久禁固の刑に処せられ、妻や息子、腹心の部下達は皆殺しにされ、娘達も凌辱された上に殺された。王は貴族に、禁固先の島に自らの財を全て使って宮殿を建てさせ、そこに住むように命じた。そして王位を授けたのだ。最も贅沢な城に住む最も不幸な王を作って遊ぶつもりだったのである。貴族は宮殿を建てた。 

数十年経ったある日、王は、この孤島の王を思い出し、一目見てなぶってやろうという軽い気持ちから、島に来た。中に入るが、誰もいない。部下達に命じて徹底的な捜索を行った結果、地下への入り口が見つかる。王は笑い、中に隠れている哀れな老王を引きずり出してこいと部下に命じて待つが、なかなか戻ってこないので、更に兵士達も投入するが、やはり戻ってこない。業を煮やした王は、自ら残った兵を率いて迷宮に入っていった。 

数十日後、王は生きながらに切り刻まれ、凄惨な拷問を受けたことが一目で分かる無惨な死体となって戻ってきた。王の遺体を運んできた部下たちも全員が発狂していた。王子達は父王を愛していたわけではなかったが、体裁上、大軍を派遣して孤島の老王の討伐を命じた。だが、その大軍もやはり戻ってこなかった。その後も何度か派兵をするが、結局、誰一人戻ってこなかった為、迷宮は入口を封印され、その島に近づくことを厳重に禁じられた。 

その後、王子たちのうちの一人が王になったが、最後の王となった。国が無くなったのだ。ある朝、この王国の港に着いた商船の乗組員たちは、恐怖した。誰もいなかった。王も貴族も民も、一人残らず、消えていた。

いつしかその島の位置は地図からも消え去り、伝説だけが残った。船乗り達の間では、この迷宮の奥では復讐に狂った王がまだ生きていて、討伐隊の兵士達や消えた王国の人々を奴隷にして迷宮を広げ続けていると信じられている。船乗り達は、例えどんなに盛り上がっている時でも、この話を海上で冗談めかして話したりはしない。「復讐の王」に呼ばれ、自分も奴隷にされると恐れているからだ。