『解題誘いの諍い 山応応酬紹介と詳解』(メゼル・イーディン)

「稼げない作品になど価値はない」と言い放つ「エンタメの帝王」ジーデル・ナダリードに対する反論として、作家カダ・リーナイが、ジーデル・ナダリードの言葉として有名な「開催誘いの快哉」(人を喜ばせれば成功する、の意)を下敷きとして山応で当てこすり、「快哉誘いの題材」(売れることだけを目的に、人気のある題材で作品を作ることは媚びであって表現ではない、の意)と題した記事を発表したことが発端で起こった誌上論争「山応応酬」の経緯と、それぞれの主張を、背景となる知識の解説とともに丁寧に紹介する。

元となったジーデル・ナダリードの言葉「開催誘いの快哉」が、「禍誘いの幸い」という山応(訳注:山応は、地球で言えば地口に相当する表現のこと。ことわざなどを、似た発音の別の言葉に変える言葉遊び)であることから、反論記事のタイトルを山応にして応酬するという遊び心が知識人の快哉を浴びた。

なお、これに対してジーデル・ナダリードが「支払い要らないの最下位」(売れなくてもよいというような独りよがりな作品も誰にも支持されず消える、の意)と更に山応でこきおろし、それにまたカダ・リーナイが「財界うかがいの代替」(金のためだけに作る作品は、人気とりのため(出資者を納得させるためも含む)に、どれもこれも似たようなものにしかならない、の意)と山応で返すという「山応応酬」と呼ばれる論争となった。

原書(初版)言語:セレンディール語

出版:世界横断都列車出版

著者情報

ルクトレスの文学者、カイズ・セタリ研究者、エリル・イーレア文学院教授。主に文学が政治や経済、他の芸術に与える影響についての研究が専門。

『カイズ・セタリとレゴール — “微笑み”が超大国で憎悪されたのは何故か』でルウェイン学術賞、『物語の生贄』でセレンディール図書館賞を受賞。

世界横断都列車で無料配布されている雑誌『暇つぶし』で連載しているブックレビュー『本を読めば暇じゃないよね』が、ユーモアのある文体で大人気。単行本はベストセラーとなっている。

主な著作に『カイズ・セタリとレゴール — “微笑み”が超大国で憎悪されたのは何故か』『物語の生贄』『ベストセラー分析 ─ 億を超える人に読ませる力の源はどこにあるのか』『本を読めば暇じゃないよね』『解題誘いの諍い 山応応酬紹介と詳解』などがある。

訳注

山応(句)・山応歌

テルンやカナ、ルカイルなど、カナルーア山脈中およびその周辺地域で古くから親しまれ、特にテルンを通じて世界中に伝播し、愛好されてきた、ことわざなどを、似た発音の別の言葉に変える言葉遊び。山応歌は、その山応(句)を連ねて作られた歌。一般にもよく知られている山応歌に、『禍誘いの占い』がある。

名称の元となった「山応(さんのう)」は、山で音や声が反響する現象を表す言葉。山で声が反響するように(概ね)同じ発音の文が続くことから。

訳者注:「山応(さんのう)」は、日本語の「山彦」「木霊」に相当する言葉だが、「山彦」「木霊」は「山の神」や「精霊」などによるという由来のある言葉なのに対して、原語では「山自身が応じる」という神話が由来なので、「山応」という造語による訳とした。